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かけといわれたのでかきました。

オレンジビーナおちゅうしゃのおじかんなの?


石御をかけといわれたのでかきました。
BLってこういうやつなの?


音。
水音。
水音を聴く。
雨?
土砂降りか、と彼は思う。
土砂降りの中を走り続けている。
レースの最中か。
そうに違いない。
体が重い。呼吸がうまくできない。
スタートがいつだったか、ひどく曖昧である。
彼の意識は混濁していた。
頭痛。
ペダルを回して、黄色い……。

ペダル?

脚は、動いていない。
今はレース中ではない。
レースは終わったばかりだ。
ジャージに印字されているロゴのひとつに愛想を振りまき共に食事を摂るために同席し、傾けたグラスの中身の味が酷いものだったことを彼は思い出した。
その後は?
何かを問われ、何かに答え、何かに応じた。
それは覚えている。
何に応じたのか。思い出せない。

この不愉快な音。

シャワーだ。その水音と、調子外れの耳障りな鼻歌を雨音に聞き違えたのだ。
頭痛と吐き気に、横になりたいと望んだような気がする。
彼の頬に触れているのは、柔らかな布地だ。

水音が停止する。

キィキィと床が鳴る。
床の音が止まり、彼の体が沈んだ。
誰かが居る。

頭に触れている。
指で髪を梳くように。
いつかの黄色い思い出をなぞるように。

しかし、思い出とは指が違う。

あの細く柔な優しい指ではなく、今、彼に触れているのは、もっと醜く太く短い指だ。
髪から額へ、額から頬へ、頬から唇へ。

口内に侵入し、歯並びの美しい白い歯をぞろりと撫で上げた。

不快感が増す。

歌に、荒い息遣いが混じった。
首元が緩む。シャツのボタンが外されてゆく。

何もかもを思い出す。
彼が何を問われ、何を応えたのかを。
これから何をされるのかを。
なにを、されているのかを。

全ては仕方がないことだ。勝利でなければならない。これは、必要な手段だ。次の勝利のための。
どんな手を使ってでも、勝利しさえすれば、それは正当な方法となる。自分を道具に貶めたとしても。
泥のような澱のような黒いモノが溜まってゆく。

「……ぁ」

小さく呻く。
咎めるように強く髪を引かれた。

喉、胸、腹と知らぬ指が這い回っている。ざわざわと総毛立つ。

肺に酸素を入れるために開いた口に、異物を感じて咳込む。分厚い手で口を覆われて、鼻を塞がれて、異物を飲み込む。
とろりと口の中で溶けたのは、飴玉にしては苦すぎるなにか。
飲み込んですぐ、口と鼻とを解放されて喘ぐと、やっと酸素が彼の肺へと入ってくる。

また、彼の頭に触れられる。
撫ぜている。
厭だ。不快だ。気持ち悪い。
それでも、これは受け入れなければならない事柄だ。この先もレースに出るためならば。

薬の効果なのか、頭に靄がかかる。
黄色。
幸せの黄色。
ふわっとした幸せの黄色の靄。
こんな時に、どうしてアシストの彼の顔が浮かぶのか、彼にはさっぱり分からなかった。
ただ、黄色い幸せに身を任せて、彼は命じられた通りに全身を脱力させた。




遠くで誰かの叫び声がする。




懐かしい、消毒液の匂いだ。
黄色い思い出と同じ。
誰かに手を握られている。
ああこれは、識っている指だ。
名前を呼ばれている。
滲む視界が、だんだんとクリアになってゆく。
「台無しやわ」
「阿保ォ……」
病院の天井。見知ったアシストの顔。
今、彼の指に絡む識った指は、不快ではない。
ツクリモノの幸せの黄色い靄は、まだ色濃く彼の躰に残る。
だから。
彼は、識っている指を己の方に引き寄せた。

おしまい
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