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クリスマスネタ

完全にクリスマス終わってから書いたよね。

わたくしは、存在、それそのものが悪でございます。
ですから、こうして枕元に靴下など飾り、針葉樹を輝かせ、魔力の焔で赤々と燃える暖炉のすぐそばにミルクとクッキーなぞ置いたのは、ただ愚かなる人間共の文化を戯れになぞっただけに他なりません。
如何なる者であっても、わたくしの寝所に忍び込むことは不可能なのであります。なぜなら、わたくしの棲家であるこの城の門番は、あの邪竜でありますし、万が一にもそれを突破されたとしても、侵入者は、この迷路のような城内で朽ち果てるか、さもなくば、城を護りわたくしを護る者たちの餌食となることでしょう。

「一体どういうことなのでしょう。」

わたくしは、翌朝目が覚めて、枕元に堆く積み上げられた色とりどりの箱々に気付いて愕然といたしました。
リボンや包装紙で飾られたそれらを軽く『視』てみても、危険性はありませんでした。宝飾品や衣や書物や珍奇な動物が詰められているだけです。
問題は、かの老人がどうやってわたくしに気付かれないように、わたくしの至近距離にこうして運び込み、かつ誰にも見咎められることなく脱出したかです。もちろん、わたくしは即座にわたくしを起こしに参った使用人に問いかけました。側近にも訊ねました。しかし、口を揃えて、「知らぬ」と申すのです。
それどころか、あろうことか皆わたくしに、箱を開けるよう促すのです。

「魔王様は今年一年とてもよいこでしたから。」

わたくしは、魔王です。悪の代名詞です。生きとし生けるものの敵たる、このわたくしが、かの老人の善い子リストに記載されたとでも言うのでしょうか。心外です。
老人のことは、話には聞いています。返り血を浴びて雪を真っ赤に染め上げ、巨大な角を持つ獣に獲物と自身を乗せた橇を引かせ、ホウホウと咆哮する巨体の老人が、年に一度、冬のある日に人間共の寝所に忍び込む。一年かけて調べ上げた対象の善悪をリスト化し、そのリストを元に、善い子の枕元には玩具や花や書物や宝飾品を置いて去り、悪い子には悪意と恐怖と滅びを与えるのです。

当然、悪の化身たるわたくしには、後者が与えられるはずでした。わたくしは念のため、その夜には城中の警備を強化し、あちこちに罠を仕掛け、わたくしの寝室には念入りに結界を張りました。
悪の中の悪たるこのわたくしが、なにを老人ひとりに怯えることがありましょう。しかし、この城の唯一無二の主たるわたくしに、もしものことがあれば、困るのは我が下僕共です。
しかし、あまりにもあっけなく突破されたことは、この箱の数々が語っています。ただし、最後の罠が役に立ったようです。針葉樹横のテーブルに置いたミルクとクッキー。
一見、何の変哲もない食べ物に見えますが、その実、これにはチャームの術がかかっています。なるほど、これで錯乱した老人は、リストを見誤り、わたくしを善い子として扱ったのでしょう。

わたくしは一人納得し、ラッピングの解体作業にかかりました。不思議と、わたくしが配下に欲しいと洩らしたものばかりがでてきます。こころなしか、側近やメイド共が嬉しそうです。
わたくしは、歓声をあげては咳払いでごまかし、歓声をあげては咳払いでごまかしました。
老人に感謝してやっても良いですが、次に合間見えたときは敵同士でしょう。なぜなら、わたくしは存在、それそのものが悪なのですから。

おしまい

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