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うさぎのあな。:「ウォンバットマガジン」さんに寄稿しました。

ツイッターでお誘いを受け、フォロワーさんの企画に寄稿しました。
ウォンバットマガジンvol.2 うさぎのあな。

以下、作成中のスピンオフの冒頭。
完成するかどうかも未定。


事の発端は、修繕士協会の男から差し出された一冊の本だった。
髪に白いものが混じり始めた年齢の、服装のくたびれた男。
地位は、芽衣にいわせれば「そこそこ高い」人間。芽衣にとっては、協会とのコネクションのひとつである。
「協会の地下倉庫に長い間保管されていたものだ。いや、封印されていたと言ってもいい。」
芽衣が手に取り、表紙を開きかけると、男は慌ててそれを止めた。
「その本を開いた人間が、全員謎の昏睡状態に陥っている。」
芽衣は眉をはね上げた。
「はあ?」
どこからどう見ても、ただの本である。
金色の金属で縁を補強した革の装丁。
見た目はただの本ではあるが、触れたところからぴりぴりと、手のひらに微弱な魔力を感じる。
表紙には今は使われていない文字でタイトルらしきものが書かれている。
「も、ん……『門』?」
「ほう。古代文字が読めるのか。」
芽衣が読み上げると、男が感心したような声をだす。
「ほんの少しならね。それで?どうしてウチみたいな民間修繕士の事務所に?協会で起こったことは協会で処理するのがセオリーだったでしょう。」
「協会内部で起きたことだからこそ、中の上下に関わらない君のところに頼むんだ。」
なるほど、つまり中の誰かのミスかなにかで、今回の事態が起きたわけだ。
それを内密に処理したい、と。
芽衣はそう予測する。
「あら。外部の人間に処理させていいの?情報が漏れてしまうかもしれないのに。」
「だからこうして、お互い協力体制のある神瀬修繕事務所を訪ねてきたんだ。」
男がにやりと笑う。
「君なら、いや、中央神殿神官長の娘と、黒崎家の養子である君たちなら、秘密を漏らすことはないだろう?」
案に、自分たちの情報を出されたくなければ、秘密裏に処理をしろと言っているのだ。
後ろめたいことはしていないが、いろいろと仕事はやりにくくなる。
「いいわ。詳細を聞きましょうか。」
「先日、今期の修繕士の資格試験があったのは君も知っているね。」
修繕士、が、ただの修理屋ではないことは、年端もいかぬ子供も知っている。
神話や伝説の中で、古代、ひとつであった神と魔がふたつに分かれるとき、その破片が地上に降り注いだと言われている。
世界そのものを破壊して落ちた破片は、地上の生き物や無機物に取り込まれ、厄介な事件を起こしている。
その破片を取り除き、世界を修復し、解決するのが、かつては魔法使いと呼ばれた彼ら修繕士である。
強大な魔力を操る能力を持つものもいる。そんな人間を野放しにはしておけない、と統括しているのが修繕士協会だ。
現在は、魔法を資格、制度化し、正しく免許を持った者のみが使用を認められている。
「この本は、先ほども言った通り長い年月、協会の地下倉庫の奥深くに眠っていた。誰も知らないままにな。」
ところが、試験の日、普段は施錠されている扉が「なぜか」開け放たれていた。
試験会場へ向かう受験者が、「なぜか」地下へと誘導され、「なぜか」この本を選んで手にとった。
たまたま受験者の階段を降りるところを見かけた職員が、地下倉庫で倒れているのを発見した。
外傷はなく、ただ眠っているだけだった。
受験勉強のしすぎであろう。今回は残念だったが、次回の試験に再チャレンジしてもらおう。
そういうことで終わるはずだった。
医務室に運ばれた受験者がしっかりと胸に抱いたこの本を興味本位で別の職員が捲った途端、同じように昏倒しなければ。
本を分析にかけた研究チームのすべてが、目を覚まさないという事態に陥らなければ。
地下倉庫の管理者が、警備部隊が、研究チームが、試験担当部署が、責任を問われ、責任を押しつけ合い、協会内部は大騒ぎになっている。
最終的に回ってきたのが、芽衣の事務所を訪ねた男のところだった。
「燃やしちゃえ。そんなもん。」
話を聞いた芽衣が、呆れて言う。
「それがそうもいかないんだ。この本の中には、被害者の魂、精神体、意識、そういうものが吸い込まれているんだから。」
書庫をひっくり返して見つけた古い文献に、この本についての記述があった。
暴走した物語、狂える書物、そういう名称で示された本について。
降り注いだ古代の神の破片が、魔法使いの書いた書物にも降り注ぎ、本を開いた人間を次々と登場人物として取り込んでいった、と。
芽衣は頭を抱えた。
この男が、いや、協会が自分にさせたいことが大体わかった。
本の中から被害者の精神体を救い出すこと。
欠片を取り除くこと。
無事に脱出してくること。
そもそもの原因を調査すること。
「無茶を言うわね」
下手をすれば、被害者数の一部に自分がカウントされる。
そういう意味では、協会内部で解決できない理由もよくわかった。
「それだけ、神瀬修繕事務所の実績が信用されているのだよ。」
ここで恩を売っておけば、今後の協会からの仕事の斡旋にとてもメリットになる。
呈示された報酬も悪くはない、どころか、口止め料も含まれているのだろう。破格のものだ。
芽衣は頷いた。
「わかったわ。引き受けましょう。」
「君ならそう言ってくれると思ったよ。」
男は満足そうに微笑んで、契約書類に必要事項を書き込み、差し出した。
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