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正直な魔王

魔王が目をそらして「自分が、嫌になるよ」と言う下らない話をRTされたらかいてください。

ということなので。



「自分が、嫌になるよ」
闇の王、生きとし生けるものの天敵、あらゆる魔物を統べるもの。
そうした仰々しい肩書きのついた青年は、玉座の間の真ん中で目をそらした。正座をしたまま。
女は、口の端を吊り上げて、ただし強い視線で彼を射抜きながら、真正面で仁王立ちした。
「猊下。魔王猊下。これで何度目ですか?」
漆黒に染め抜かれた絹が床に触れるのにも構わず、
「ほんとあの、これはいっそ病気っていうか、いやむしろ魔王なんだし、欲望に忠実なのは至極当然というか……ごめんなさい」
魔王は土下座した。
小指一本分を離して真横で炸裂した雷撃が、床を焦がして地下牢まで吹き抜けを造った。
今は真夏だというのに、ひやりと冷たいものが魔王の背筋を走る。
「人間と、魔族がこうしてせっかく共存したのです。無駄な争いのもとを生じさせるのは愚かなことだと思いませんか?」

彼女は、人類の代表であり、さる王族の姫君であり、かつて先々代の魔王と血で血を洗う争いを繰り返した勇者の末裔だった。
何千年にも及ぶ人類と魔族の闘いに疲弊した両者は、お互いの代表者を差し出すことで和平を締結した。
よくある政略結婚。
姫君は、「いつか白馬の王子様が自分を攫いにくる」ことを夢に見てはいたが、攫いにきたのが王子様でなく王であり、白馬でなく漆黒の獅子であるといった些細な違いには目を瞑った。
魔王は魔王で、人類とはいえ、嫋やかな絶世の美女であり、純粋で良質な魔力を持つ姫君を気に入った。
ふたりの結婚は、それなりに上手くいった。
しかし、魔族、人類ともにそれが受け容れられないものも未だに多く、姫君か魔王が自ら「説得」に出向くこともしばしばだった。

今回は、偶々それが重なったため、魔王と姫君はお互いに西と東にわかれて、騒ぎを静めに行ったのだった。
そして、なかなか静まらぬ騒乱に業を煮やした魔王は、首謀者を陥落させた。
それが若い娘であったことも好都合だった。
手っ取り早いし実益も兼ねる。
もともと、欲望に素直であることが魔王のモットーである。
偽りの愛を娘の耳に囁き、躯を蕩けさせ、娘の全てを捧げさせ……。
聖女と祭り上げられた娘は、あっさりと魔王の手に堕ちた。
それから、魔王はある程度、指揮官の役割を担っていた者、その娘、妻を片っ端から摘み食いして。
大半が戦意を失った後の騒ぎはあっけなく幕を閉じたのだった。

意気揚々と帰還すると、后が玉座の間で、にっこりと出迎えてくれた。

それから人払いされた玉座の間で、魔王の出向いた先での悪行を事細かに記録した宝珠の上映会が始まった。
「うふふ。猊下。猊下はこんな風に冷たい口調でわたくしを責めたことはありませんね。」
艶やかな笑顔であるが、全く目が笑っていない。
「ああ、わたくしが責めるからでしたね。へえ。相手が弱ければ責める側に立つんですのね猊下でも。」
みしり、と頭を踏み付けられる。
ほんの少しのエクスタシーを感じながら、それでも魔王は土下座の姿勢を崩さない。
「争いを鎮めるのに、こういう手段は感心しませんよ。」
ぐりぐり、と爪先に籠められた力が愛おしい。
后の可愛らしい体重に、笑みがこぼれると、どうやら伝わったらしい。足が除けられ髪の毛を掴まれて引き揚げられる。
「仕方のない人。今回は許してあげますが、もうオイタはだめですよ?」
ぎりぎりと、無理矢理腕を伸ばして后を抱き締める。
魔王は、自分が嫌になる。
「それは保証はしないが私が真に欲しているのはお前だけだし、私が結婚するのもおまえだけだ。」
魔王は愛しい后の顔を曇らせる自分が嫌になる。
「猊下は本当に正直者ですね。そういうところが大好きですよ。でも今日は腕と脚の2、3本は覚悟してくださいね。」
魔王は痛みと快楽の渦の中で、時々思うのだ。
自分が嫌になるから、人間に倒してもらうのではないか、と。


<なんだこれ>
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comment

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>一夜様

ありがとうございます!
即興ですと、どうしてもこう、駄目魔王ができあがります。不思議ですね。
お粗末さまでした。

ヘタレ魔王様ごちそうさまでした!

魔王が悪いのに何故か応援したくなってしまいましたw
なんだかんだでリア充なお二人に幸あれ!
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