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魔王「いつか私は復活を遂げるだろう。その暁には、享楽にふける。絶対だ。」

ついに、とその女は声を震わせた。
彼女の前にあるのは、禍々しくもどす黒いオーラを醸し出す岩である。
女は厚く着込んだローブの袖口からひとつの巻物を取り出すと、唄うように呪文を唱える。
岩が、小刻みに揺れる。
女の呪文に応えて。
女の額に汗が浮かび始めた頃、岩が紫色の発光を始めた。
女は、それを見て口の端をつり上げた。
邪悪を腹に抱えるものの笑みだ。
あと少し。
あと少しで、叶う。
女の行為は、かつて勇者と闘い敗れた魔界の王を目覚めさせようというものだ。
女は、王宮魔導師の地位にある。
彼女は、多忙だった。
ひたすらに多忙だった。
休みの一日すらなく、寝る暇さえなく。
国のために何もかも捨てて尽力してきた。
そんなある日、彼女に向かって誰かが言った。
「こんな平和な中に、お前など何の意味があるのか。」
ぷつり、と。
彼女の中で何かがきれた。

その夜、彼女は出奔した。

ならば、私の代わりを誰かがしてみればいい。
ならば、私が抑えていたものを、私の代わりの誰かが抑えてみればいい。

かくして。

「目醒めよ魔王!我が祈りを聞き届けよ!」

魔王は復活を遂げる。


魔王「ん……うーん……あと五年……」

魔導師「……?」

魔導師「永き封印より目醒めよ!悪意の王よ!」

魔王「あと五分眠らせて……」

魔導師「……また随分と色気のある寝姿……って」

魔王「んーっ……。おはよう愚かなる人類よ。」

魔導師「えっと……魔王、ですよね……?」

魔王「いかにも。私が魔族の王である。目覚めるにはまだ早すぎる。というか夜中ではないか。」

魔導師「ナチュラルに二度寝しようとしないでください。何百年も眠ったでしょう!?」

魔王「寝すぎると余計眠いものだ。」

魔導師「そういうレベルじゃ……」

魔王「ふむ……よく見ると、なかなか器量のよい娘であるな。よし。同衾を許してつかわす。」

魔導師「しませんよ!?」

魔王「良いではないか。」

魔導師「きゃっ!?」

魔王「うむ。思ったとおり抱き心地のよい……あたたかいし……やわらか……すう……すう……」

魔導師「ちょっ……どこさわっ……寝てる……」

魔導師「起きてくださーい……」

魔導師「睫毛長い……」

魔導師「髪の毛細い……」

魔導師「……ん?」

魔導師「なんか心なしか……さっきより胸に顔を埋められているような気が……」

魔導師「…………」

魔王「痛っ!?眠っている者を無言で串刺しにするな。清められた短剣ではないかタチの悪い。」

魔導師「タチの悪いのはどっちですか。ひ、ひとの胸に……」

魔王「封印を解いたのはお前だろう。」

魔導師「え、えらそうに……」

魔王「偉そうなのではない。偉いのだ。」

魔導師「あ……ちょっ……」

魔王「とりあえず睡眠欲を貪……」

魔導師「起きなさい!ねえ!手の位置!せめて手の位置変えなさいよう!」

賢者「……邪悪な気配を探って見れば……」

魔導師「こ!これは違うの!」

賢者「欲望に忠実なのが魔王の魔王たる所以、だったな。睡眠欲だったかー。」

魔導師「三大欲求の二つに忠実だったんだけど!ねえ!」

賢者「なんか心配なさそうだね!お幸せに!」

魔導師「えっ……あの……助けてよう!」

魔王「五百年振りのちちしりふちもも……むにゃ……」

魔導師「みゃーっ!?」

賢者「王宮魔導師殿。世の中は因果応報なのだよ!おやすみなさい!」



かくして、それからきっかり五時間後に魔王は復活を遂げた。

しかし、世界は概ね平和だった。




<出オチ。続かない。>
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思いついただけで続ける気の無い文章を置いておく場所。
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