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魔王「味方だと思った?残念!魔王ちゃんでしたー!」

ハリウッドB級映画的なのを書きたかったのに、途中で逸れた。あるある。







剣士「両手を頭の後ろに回してその場に伏せろ!抵抗は無駄だと知れ!」

姫「ひっ!?」

僧侶「人質の安全を確認。怪我は見られない。健康状態は良好。魔王は一応、人道的な扱いをしていたらしいな。剣士、罠の類もない。剣をおろしていいぞ。」

魔導師「姫様、ですね?大変失礼いたしました。ゆっくり起き上がってください。」

姫「は、はい。あなたがたは……?」

勇者「俺たちは、君の救出を依頼されたチームだ。無事で良かった。さあ、脱出しよう。」

姫「えっ。勇者様?イメージとずいぶん違いますわね。」

魔導師「良いですか姫様。うちの隊長の合図で頭を低くして走ってください。前は隊長殿と僧侶が、後ろはわたしと剣士が守ります。」

姫「わ、わかりましたわ。でも、あんなに魔物がいる中をどうやって外へでますの?」

剣士「お姫さん、これをいざという時の為に渡しておくわ。」

姫「れ、レイピアですか?」

剣士「扱ったことは?」

姫「お稽古でなら何度か。」

僧侶「しかし剣士。実戦と姫君の経験したようなお上品な稽古とは全然ちがうぞ。」

剣士「それはあたしにもわかっているさ僧侶。だから『いざという時の為』なのさ。」

僧侶「なら、姫君には大事に仕舞っておいていただこう。使うタイミングはないからな。」

剣士「それもそうだ。あたしたちが守るからね。」

勇者「無駄口を叩いている暇はない。我々はここから無事に姫を脱出させなければならないからな。そろそろ行こう。魔導師、頼む。」

魔導師「了解しました隊長殿。『火焔呪』!」

姫「すごい熱気!きゃっ!」

勇者「姫!さあ俺について走ってください!俺の後に続け!Go!Go!Go!Go!Move!Move!Move!」

僧侶「12時、クリアー!このままつっこむぞ!」

姫「前方は壁ではありませんか!」

勇者「姫!止まらず走ってください!爆破します!」

姫「お待ちくださ」



姫「」



勇者「……!……!!」

姫「閃光と爆音で目と耳が……」

勇者「……。……、……!」

僧侶「……。」

姫「これは、治癒魔法の光?ああ、視界が晴れていく。」

勇者「怪我はありませんか姫。」

姫「む、無茶をなさいますのね。」

剣士「敵本拠地からの要人奪還ですからね。あたしたちとしても、多少の無茶はお許しいただかないと。」

姫「嫌味なんですけれど……」

魔導師「さあ、この先のポイントに本部から迎えがきています。歩けますか?」

姫「え、ええ。歩きます。」

剣士「ひゅー、気丈なお姫さんだ。」

勇者「僧侶、現在位地を確認しろ。剣士、魔導師、周囲の警戒を怠るな。」

僧侶「ポイントアルファまでは、今の我々の足で◯七◯◯時には到達といったところだ。」

姫「わたくしに何かできることは……。」

剣士「お姫さんはなにもしなくていいよ。おとなしくあたしらに守られときな。」

姫「で、でも」

僧侶「では姫君。こうしていてください。必要最低限以外は口を開かない、勝手な行動をしない、我々のそばを離れない。」

姫「そっ……!わたくしが足でまといとはっきり申したらどうです!そんな言い方!」

勇者「お許しください姫。僧侶は悪気があって言っているのではないのです。」

魔導師「我々も、本来の魔王討伐任務とは違い、人間の領土での護衛任務ならばともかく、敵地での要人の保護は初めての経験です。できるだけイレギュラーは潰しておきたい。」

姫「……わかりました。あなたがたに従いましょう。」

勇者「ありがとう姫。」

姫「べ、べつにそのように頭を下げられるようなことではありませんわ。わたくしとて無事にお城に帰りたいだけですもの。」

剣士「またでたよ。隊長殿の天然フラグ建築。」

魔導師「本人にそのつもりがないからタチが悪いのですよね。」

勇者「?」

姫「?」

僧侶「安心しろ。どうやら姫君も同じらしい。」

剣士「ま、あたしらとお姫さんが同じ目線で話してるのだって、こーいう非常時じゃなきゃありえないしねえ。」

魔導師「隊長殿と姫様に恋でもされたら、わたしたちのチャンスがなくなりますものね。」

剣士「たち、って言うな。あたしにとっては隊長殿はただの命の恩人なだけさ。」

魔導師「あら。それなら良かったわ。ライバルは少ない方が良いもの。」

剣士「魔導師、お前まさか。」

魔導師「この戦いが終わったら、隊長殿に気持ちをお伝えします。」

剣士「そ、そうか。がんばりな。」

魔導師「素直になればよろしいのに。」

僧侶「そろそろ、ポイントアルファに到達する。」

姫「みなさんがおっしゃっていた場所ですわね。良かった、魔王城からは魔物との戦闘もなく、無事に……」

勇者「変だな」

姫「何がですの?」

僧侶「静かすぎる。」

魔導師「待機している味方に通信を試みます。」

勇者「頼む。」

魔導師「アルファ、アルファ、こちらチーム・チャーリー。どうぞ。」

念話『チーム・チャーリー、こちらアルファ、どうぞ。』

魔導師「アルファ、チーム・チャーリー、姫の救出しました。合流まであと15分程度。どうぞ。」

念話『チーム・チャーリー、お迎えの準備はできています。どうぞ。』

魔導師「アルファ、チーム・チャーリー、ラジャー、アウト。」

剣士「応答、あったね。」

魔導師「ええ。」

僧侶「しかし、やはり違和感はないか?」

剣士「なにがさ?」

僧侶「何が、という確信があるわけではないが……」

剣士「僧侶はいつもそれだ。」

勇者「用心するに越したことはないよ。行こう。」



勇者「壊滅、か……。」

姫「ひどい……」

魔導師「精鋭部隊が、こんな……。」

魔王「味方だと思った?残念!魔王ちゃんでしたー!」

剣士「魔王の乗っている鉄の塊はなんだ!?」

僧侶「でかいな。まるで聳え立つクソだ。」

魔王「お姫様は渡してもらおう。君たちのおかげで、我々魔族も大きなダメージを受けているんだ。でも、お姫様の力があれば、僕たちのはまた以前の勢力を取り戻せるからね。」

勇者「聞けない、と言ったら?」

魔王「君たちも、そこらに転がっている死体の仲間入りがしたいかい?」

剣士「ふざけるな!お姫さんはあんたになんかわたさないよ!」

魔王「うるさいなあ。僕は、そこの勇者君と話をしてるんだよ。」

魔導師「鉄の人形が光って……!危ない剣士!」

姫「魔導師さん……!」

剣士「馬鹿!なぜあたしを庇った!僧侶!はやく治癒魔法を!」

僧侶「やってる!だが、傷が塞がらないんだ!」

魔導師「……あの青い光……ただの熱線ではありません……。これ、は……けほっ、けほっ」

魔王「迷ってるみたいだね。ひとついいことを教えてあげよう。今、そこの女の子が受けたこの熱線には面白い特性があるんだ。対象者をすぐには死なせず、じわじわと全身に侵食を拡げていく。」

魔導師「うう……」

魔王「対象者は、術者が望む限り、この世で受けるありとあらゆる苦しみを知りながらゆっくり死んでいく。もちろん、人間如きが操れる魔法じゃ、絶対に治らないよ。みすみす、仲間を死なせたくないだろう?」

僧侶「な……!」

魔王「そうやって命が尽きたら、もっと面白いことが起きるんだ。死んだ肉と魂を、僕らの側、つまり魔族として引き込めるんだよ。そこの女の子は、死んだ瞬間からこの僕のものってわけさ。」

魔導師「……!」

魔王「だから、自害しようなんて考えない方が賢いよ。僕の側に来るのを早めたいんじゃなければね。」

勇者「魔導師……」

魔王「ただ、僕もそこまで非道じゃないからね。姫をこちらに渡してくれたら、その子の術を解いてもいいし、傷も治してあげよう。」

姫「勇者様、わたくしを魔王の元に行かせてください!」

剣士「だめだ!姫が魔王の手に渡れば、姫の力を使って魔王は完全体になってしまう。そうなりゃニンゲンはおしまいだ。だけど……!」

魔王「時間をあげるよ。明日の朝、答えを聞かせておくれ。今日は僕も一日働きづめだし、この機械も今ので打ち止めだからね。」

僧侶「待て!魔王!……くっ、逃げられたか……」

魔導師「……わたしのことはここで捨て……置いて……ください。」

姫「何をいうのです!」

魔導師「隊長殿……いえ、勇者様……任務を最優先に。わたしと姫様、どちらの優先順位が高いか、お解りでしょう……。」

勇者「……」

姫「迷う必要はありません。わたくしが魔王の元に」

勇者「……魔導師は、ここに置いて行く。」

姫「……!」

剣士「そう、か。やっぱり。」

僧侶「仕方ないな。」

姫「仲間を見捨てるとおっしゃるのですか!」

勇者「どうにもならないんだ。何をしても彼女は救えないし、逆に敵に回るという危険性がある以上、連れて行くことはできない。失うのは惜しいけど、魔王が退いた今はチャンスなんだ。」

魔導師「わたしが……交渉材料とならないことが……わかれば、わたしのことは破棄されるでしょう。そうすれば、わたしは人間として死ねる……。魔族になど……ならずに済む……。」

勇者「君ならそう言ってくれると思っていた。……ごめん。」

魔導師「顔をあげてくださいまし。さあ、そうと決まれば、一刻も早くご出立を……。わたしが意識の続く限り幻術で、隊長殿やみなさんの影を作ります。ここにとどまっていると思わせれば……時間は稼げるはずです……。」

剣士「魔導師ィ……ごめっ……ごめん……あたしを……あたしなんかを庇ったせいで……ぐすっ……。」

魔導師「いいえ。剣士、あなたのほうが、わたしよりも戦闘に長けています。残るならあなたのほうが残ったほうが、隊長殿をお守りできる。この戦いが終わるまで生き残って。そして、隊長殿……勇者様に、気持ちを伝えるのですよ。……ありがとう。どうか泣かないで。」

剣士「ばかあ……!」

魔導師「ふふっ……それから僧侶。」

僧侶「ああ。」

魔導師「あなたには、何度命を救われたかしら。感謝しています。ごめんなさい。不甲斐なくて。こんな風にあなたの努力を無駄にして。」

僧侶「気にするな。」

魔導師「王都に姫を送り届けたら、小さくていいから、わたしのお墓を作って弔ってくださらない?」

僧侶「……ああ。」

魔導師「良かった。これを、預けますね。」

僧侶「お前の長い髪が好きだった。こんな風に乱暴に切って欲しくなかったな。」

魔導師「ふふふ……でも、空のお墓じゃ嫌だもの……。」

姫「どうして!どうしてこんなふうに!」

魔導師「姫様。」

姫「魔導師さん……!わたくしは、わたくしは嫌です!こんなのひどい!どうしてみなさんはこんなふうに平気なの!どうして!」

魔導師「……戦いに身を投じた以上、常に選ばなくてはならないのです。よりベターなほうを。今回選ばれるべきがわたしでないだけ。」

姫「そんなの……!納得できません……!」

魔導師「勇者様。」

勇者「うん。」

姫「いや!離して!わたくしは魔導師さんを置いて行ったりしたくありません!おろして!」

魔導師「さようならみなさん。」

剣士「ごめっ……ごめんなさい……!」

僧侶「じゃあ、な。」

勇者「魔導師……ありがとう……。」

魔導師「はやく!はやくお行きください……!魔王に気づかれる前に……!」

勇者「すまない……!」

姫「嫌です!いやあ!」



魔導師「行っちゃった……わたしは、勇者様、あなたのことをお慕いしていました。」

勇者幻『うん。』

魔導師「役たたずでごめんなさい。足を引っ張ってばかりでごめんなさい!」

勇者幻『よしよし。』

魔導師「魔族になんか、なりたくないよう……」

勇者幻『魔導師。魔導師。』

魔導師「本当は、平和になって故郷に戻ったら、魔導師なんかじゃなくて、あなたの幼馴染のただの女の子に戻って、あなたに気持ちを伝えるつもりだったの。」

勇者幻『魔導師』

魔導師「勇者ぁ!勇者ぁ!」



姫「どうしてなの!どうして魔導師さんを助けてあげなかったの!わたくしさえ、魔王の元にいけば、魔導師さんは助かったかもしれないのに!」

勇者「必要な犠牲だった。姫を魔王に渡せば、俺たちのやってきたことが全部無駄になる。人間の世界が、魔王の手に渡るんだ。」

姫「そんな!なぜあなたはそんな風に平気な顔をしていられるの!」

勇者「平気そうに見える?」

姫「あ……」

剣士「あたしたちは、こうやって生き残ってきたんだ。こうするしか、生き残る道を知らないんだよ。」

僧侶「最初はもっと多かった。商人や、獣使いや、盗賊や、弓使い、鍛治職人なんかもいたな。」

剣士「賑やかだったよね……」

勇者「俺たちは、任務を優先しなくちゃいけないんだ。」

姫「なぜ、なぜそんな。」

勇者「王の命令だからさ。俺たちが従わなければ故郷の村や町が……。いや、姫には関係ないな。」

僧侶「姫君、納得できなくてもいい。どうか我々に、あなたを無事に城へ届けさせてくれ。」

剣士「頼むよ……魔導師の、魔導師の犠牲を無駄にさせないでよ……」

姫「…………。」

姫「……あなたがたに、ついていきましょう。」

勇者「ありがとう。」

姫「お城についたら、魔王封印の儀を大急ぎで執り行います。こんな犠牲者は、もう出させません。」

勇者「……うん。」



魔王「あちゃー、やられたねー。すっかり騙されちゃった。」

魔導師「ウウ……ユウシャ……ウウウ……」

魔王「よしよしいい子だね。泣いているのかい?見捨てられちゃったんだね。可哀想に。」

魔王「僕ももう、ひとりぼっちだからさあ。君たちみたいに仲間が増えて嬉しいよ。」

兵士「グルルルル」

魔王「ま、まえは人間として僕の仲間をたくさん倒してくれたわけだけど。こうして僕の側についてくれたんだもん。水に流して迎えてあげよう。」

魔導師「マゾク、ナンカニ、ナリタク、ナイ……」

魔王「この辺にいた兵隊は、あんな風に異形になっちゃったけど、君なら元々の魔力が強いし、君のが望むだけで好きな姿でいられるよ。君の姿のままでいることも可能だ。」

魔導師「ニンゲン、ニンゲンデ、イル……」

魔王「強情だねえ君も。もう人間としては死んじゃってんだし、無理しないで身を委ねなよ。」

魔導師「イヤダ、イヤダ、キモチイイノ。イヤダ。」

魔王「うん。魔族化ってすごく気持ち良いらしいんだ。」

魔導師「アッ、ヤダ、ヤダア、……ン、イヤ……」

魔王「優しくするよ。大事にするよ。勇者みたいに君を見捨てたりしない。」

魔導師「マオウ、ミステ、ナイ……」

魔王「勇者が愛してあげなかった分、僕が愛してあげる。君が望むなら、勇者の姿をとってもあげられる。もう、幻術なんかで自分を慰めなくて良い。」

魔導師「……ア」

魔王「いい子だね。大好きだよ。」ちゅっ

魔導師「魔王、様……。」

魔王「もう無駄な犠牲者を出さなくて良いんだ。僕は君たちの国みたいに、人質をとって自分の駒にしたりしない。僕についてきて。一緒に、君の国を滅ぼそう。そして、人質を開放しよう。みーんな魔族にして、平和に暮らすのっていいと思わない?」

魔導師「そう、ですね。」

魔王「じゃあ、手始めに、姫をもらいに行こうか。彼女の力を取り込めば、もう僕は封印なんかされないし、力も好きなように使えるし。」

魔導師「わたしも、お供します。」

魔王「仲間と戦うことができるかい?辛い思いをさせたくないんだ。」

魔導師「勇者様、いえ、勇者はわたしを棄てました。」

魔王「……そっか。」



国王「よくぞ、我が娘を救ってくれた。褒美をとらせよう。」

姫「お父様!ただそれだけですか!?この方達は、とても危険な目にあいながら、お仲間を亡くしながらわたくしを助けてくださったのですよ!」

国王「姫や。こやつらは勇者とその一行だぞ。当たり前の仕事をしただけだ。わしは契約に基づいてちゃんと報酬を与えた。」

勇者「……。」

国王「それとも、他に何か望むものがあるか?勇者よ。」

勇者「我々は、まだ魔王討伐の任務を果たしておりません。残りの報酬は、約束通りその後で。」

姫「お父様!せめて、この方達の故郷の村を開放してください!」

国王「……魔王討伐成功が、条件で、あったな。」

姫「お父様!」

勇者「……はい。」

国王「期待しておるぞ。勇者よ。」

勇者「ありがたきお言葉。」

姫「こんなの!こんなのおかしいです!お父様!」

国王「今回の報酬を受け取ったらすぐに発て。良いな。」

勇者「……はっ。」

魔導師「その必要はありません。」

姫「魔導師、さん!生きて……!?」

国王「ガッ……!」

魔導師「あら、偉そうにしていた割には、結構簡単に千切れますね。王様の首。」

姫「きゃああああ!お父様!お父様!」

勇者「意外と早い再会だったね。……魔導師。」

魔導師「剣士や僧侶は一緒ではないのですか?」

勇者「いつも通り、宿屋で待機だ。城に入れる身分ではないからな。」

魔導師「報告はいつも協会所属のわたしと勇者であるあなただけでしたものね。」

姫「一体、何が……。どうして魔導師さんがお父様を」

魔導師「姫様、怖がらせてごめんなさいね。」

魔王「側近くん、よくできました。若い頃からあんまり気に入らなかったんだよねー。こいつ。あと、僕を封じる儀式ってここの国の王ができるんだよね。阻止しておきたいからねー。」

勇者「『側近くん』?」

魔王「ああ、君たちが彼女を見捨ててくれたおかげで、彼女は晴れて僕のものになったんだ。」

勇者「魔導師……それは、君の意思?」

魔導師「……精神は確かに魔力に侵食されましたが、最後に決めたのはわたしです。でなければ、あんな風に気味の悪い化け物になっていましたからね。」

勇者「まさかあの蠢いている肉の塊は」

魔導師「この城の兵や使用人です。わたしのように自らの意思で受け入れれば姿を保てますが」

姫「……ひっ!」

魔王「拒否したら、まあ、あんな感じ。」

勇者「姫、俺の後ろに下がって。」

魔導師「あなたなら、そうすると思っていました。残念ですが。」

勇者「魔導師と戦うのは気が進まないな。」

魔導師「小さい頃は、わたしの魔法とあなたの剣術で、よくじゃれあったものでした。すぐに敵わなくなりましたけれど。」

勇者「懐かしいな。」

魔導師「今はどうでしょうね。」

勇者「魔王に魂を売り渡して得た力と、俺の剣術を比べる?」

魔王「側近くんは勇者と戦わなくていい。勇者と戦うのは、僕の仕事。」

魔導師「……魔王様。」

魔王「そんな顔しないで。王の首を取るだけで泣きそうな顔をしていた子に、勇者を倒させるわけにはいかないよ。」

勇者「まるで、魔導師が俺に勝てるような口振りだな。」

魔王「まーね。彼女の今の力は、僕の力だから。でも、させないよ。僧侶や、剣士とも戦わせたくないから、先に処分してきたし。」

姫「剣士さん、僧侶さんの、く……び……!」

魔導師「……ッ!」

魔王「側近くん、彼らは僕を拒否したんだ。でも、知り合いがああいう肉の塊になって仲間になるのは、側近くんに辛い思いさせちゃうからね。」

勇者「……魔王ッ!」

魔王「唯一、勇者が僕を倒せて、王家の人間が僕を封じられる。どっちもいなくなれば、僕らの楽園が創造できるんだ。そんなわけだからさ。勇者、ここで、滅びなよ。」

勇者「ぐ、ぅ!」

魔王「へえ。やっぱり勇者だけあるね。強いや。でも、魔王に勝てるほどじゃなかったね。」

勇者「ここまで、か……!」

姫「勇者様!」

魔導師「……姫様、近づいてはなりません。」

勇者「姫!」

魔王「バイバイ勇者。僕たちにとっては良い踏み台だった。……何ッ!?」

魔導師「ごめんなさい。ごめんなさい。魔王様。あなた様なら、わたしを愛してくださるとわかっています。でも、わたしは……!」

姫「魔導師さんが、魔王を……貫いて……」

勇者「魔導師……?」

魔王「側近くん、馬鹿だな。こんなことをすれば、君まで消えるよ?」

魔導師「存じています魔王様。でも、わたくしが愛しているのは、勇者様、なのです。」

魔王「じゃあ、なんだよ……君は、最初からこうするつもりで……?」

魔導師「魔王様、ごめんなさい……。」

魔王「ちぇっ、振られちゃったのか。君は、魔族になっても人間みたいだね。すごく、嘘吐きだ。」

姫「勇者様!」

勇者「あ、ああ!いくぞ魔王!」

魔王「勇者アアアアアア!」

姫「魔導師さん、離れて!魔王を封じます!」

魔導師「いいえ!わたしは、魔王様と、この方と共にいます!」

魔王「……側近、くん?」

魔導師「わたし、すごく嘘吐きなんですよ。勇者様からなんて、もうとっくに心が離れています。今わたしが共に在りたいと思っているのは、魔王様だけ。」

姫「魔導師さん!」

勇者「魔導師!」

魔導師「それから、わたし、すごく独占欲が強いんです。これから、何千、何万年、魔王様はわたしだけのものです。」

魔王「まいったね。」

魔導師「いつか目覚めたら、魔王様が語ってくださった、理想郷を創ってくださいね。」

姫「もう、間に合いません……!」

魔導師「姫!このまま封じてください!魔王はわたしが抑えます!」

魔王「こういう場合、抵抗するポーズとった方がいいのかな。納得ずくで封じられる魔王っていうのも、なんかアレだし。」

魔導師「お好きに。」

魔王「じゃあ……。」

姫「ゆるしてください魔導師さん!」

魔王「人間共!我は必ず蘇る!そのときは、我々魔族の楽園を創ろうぞ!」

勇者「永い眠りにつくがいい!魔王!」

魔王「グ、ガアアアアアアアア!」



勇者「おわっ、た……」

姫「おわり、ましたね……」

勇者「……姫。」

姫「はい。」

勇者「チーム・チャーリー、只今、魔王討伐の任務を完了いたしました。」

姫「父が契約していた報酬は、一体何ですの?」

勇者「村の解放と、重税の軽減、それに、我々のような戦奴の自由です。」

姫「認めましょう。それから」

勇者「以上ですが……」

姫「国と、花嫁は、要りませんか?」

勇者「!」

姫「あなたが、望んでくださるなら、ですけれど。」

勇者「俺は……」



<了>
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思いついただけで続ける気の無い文章を置いておく場所。
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