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ツイッターお題より、『公園で、目を閉じて耳に息を吹きかける魔王』

オートマタ』のときの魔王をつかって、診断メーカーの「公園で、目を閉じて耳に息を吹きかける魔王をかきましょう。」のお題を消化する。





女は魔王だった。
今も魔王であることには変わらない。

しかし、最近は時折思う。
魔物の頂点であったかつての自分ならば兎も角も、魔物のいない現在、自分は魔王といえるのか。

在りし日は人間の憩いの場であったのだろう。
錆び付いた遊具が、長く使われなくなったのを感じさせる荒れた公園は、しんと静まり返って、月明かりに照らされている。
辛うじて残っていたベンチの上、魔王の膝を枕にして眠る勇者の髪を撫ぜる手を止めて、ふと微笑んだ。

どうでも良いか。

勇者との約束では、もし自分の他に魔物が見つかれば、そして彼の他に人間が見つかれば。
再び自分は魔族として、彼は人間として、どちらか一方が滅びるまで闘うことになっている。
が、自分が魔王であればこそ、わかっている。

もうこの世に魔族は自分ひとりであることを。

人間が魔物と呼んでいたものの一部は残っているが、あんなものは人間にとっての動物や、虫ケラと一緒だ。
だから、次に知性のある生き物に出会うとしたらたぶん、それは人間だろう。

そして、この男はそのときに人類代表、人類の希望に戻るのだ。

せめて、その日がくるまでは、ただのグロリアという女として、エイベルの隣にいたい。
魔王は、少し体を折り曲げて、目を閉じると、勇者の耳に口を寄せた。
そのまま、ふう、と息を吹きかける。

「魔王しね」
「そろそろこちらも眠るから、おりてくれないか。」
「……ああ。」

勇者は返事だけして顔を腿にすり寄せて、再び規則正しい寝息をたてる。

「まったく。愚かな人類だね。」

つん、と頬を突くと、勇者はその手を捕まえ握り、離そうとしない。

「そんなにこちらの膝は寝心地が良いのかい?」

人間の女のような温もりもなく、ひやりと冷たいだけだというのに。

もし、人類の生き残りがいたら。
そしてそれが女だったら。
彼はそちらを欲するだろうか。
魔王の自分を倒したあとに、あたためあえる体温を持った女を、彼は抱くのだろうか。

彼に倒されるのは構わない。彼に滅ぼされるのを望んですらいる。

けれど。

エイベルが自分でないほかの何かのものになるのだけは、なんとなく嫌だ。

「愚かな魔族だ……」

今この瞬間、勇者の頭を膝に乗せて幸せを感じている魔王は、我ながらひどく滑稽だ。

だから。

人類の生き残りは、見つけ次第滅ぼすと決めている。
彼に抱かれるのは、自分だけだ。
彼が生まれてから死ぬまでに知る女の肌の感触は、この魔王の肌だけにしてやるのだ。

「永遠に人のぬくもりを知らぬまま死ぬがいい、勇者よ。」
「……ばか。」
「やあ。起きたかい。きゃっ!?」

ぐいっ、と掴まれたままの腕を引かれ、魔王は勇者の方に倒れこんだ。

「お前は今、俺に丁度良いように出来てるからイイんだよ。」

抱きすくめられ、勇者の体温と鼓動が直接、体に伝わってくる。

「寒くはないかい?冷たいだろう。」
「今日は暑いからお前を抱くと快適なんだ。」
「ついでに愛してくれないか」
「ばか。」

ふふ、と笑って、魔王は全身を勇者に預けた。



夜はまだ、しばらく明けない。



<了>
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