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緋色の魔女 3

台詞形式。緋色の魔女 3

魔女「ねえ御者もいないのにどうして走ってるの?」
村娘「……?センセイの馬車はいつもこうだよ?」
魔女「私の知ってる馬車とは違うみたい。」
村娘「ねー。本当に速いでしょー」
魔女「馬の速度ではないわ……。」
村娘「大丈夫?」
魔女「え、ええ。なんとか。」
村娘「イヴィ、本当にキレイだよねー。」
魔女「お世辞が上手ね。」
村娘「オセジじゃないよ?わあっ見て!お城が見えてきた!」
魔女「やっぱり私だけ引き返すわけには」
村娘「だめだよそんなの!」
魔女「いかない、のね……」



王子「来てくれると思うかい?」
従者「さあな。だが、例のドクターにはいつも通り手紙と招待状を預けたし、出席の返事はもらってるさ。」
王子「楽しみだな」
従者「なあアンディ、そろそろその娘の素性を教えてくれてもいいんじゃないか?」
王子「ああ、彼女が来てくれたら親友の君には教えよう。この舞踏会の後で。」
従者「来なかったら?」
王子「その時はアレックス、君と踊ろう。」
従者「……ばかめ」



村娘「センセイ!」
医師「やあニーナ。今晩は一段と可憐ですね。」
村娘「センセイも夜会服似合ってるね。」
医師「それはどうも。……彼女は?」
魔女「ここに。」
村娘「ね、言ったでしょう!お姫様みたいでしょ」
医師「これはこれは。イーヴァ?貴女はこの会場のどの姫にも見劣りしないのですから、もう少し自信をもってはいかがです?」
魔女「で、でも……。ニーナは平気なの?」
村娘「あたしはセンセイにときどきこういうところに連れて来てもらってるし、今日もセンセイのコイビトとして……あっ」
魔女「私の連れとして招待状がないと、とか、一生に一度あるかないか、って嘘だったの!?」
医師「お喋りですね」
村娘「だってこうでもしないとイヴィ来ないじゃない!」
魔女「ひどいわ」
村娘「もう来ちゃったんだから楽しめばいいのよ!」
魔女「そんな!」
医師「恨み言はあとで聞きましょう。」
魔女「ひどいひとたち。」
村娘「えへへ、ごめんね」
医師「さあお嬢様方、お手をどうぞ」
魔女「ね、ねえ。なんだかみんなこちらを見ていない?」
医師「ええ、注目されているのですからきちんと背筋を伸ばしてください」
魔女「や、やっぱり奇異の眼差しで」
村娘「堂々として!イーヴィー、今夜だけでいいからプリンセスを演じるのよ」
魔女「何言ってるの?」
医師「まあ、遅刻してますし、ね。いっそ開き直ってしまえば良いのです。」
村娘「おかげで、ダンスの時間にぴったりだよ。センセイ、踊って下さらない?」
医師「喜んで。」
魔女「待って!?私をひとりにしないで!」
魔女「ああ……行ってしまったわ……」
魔女「できるだけ端の方に……」
魔女「やっぱりくるんじゃなかったわ」
魔女「だってどう考えても場違いだもの。」
姫「御機嫌よう。」
魔女「わ……ご機嫌麗しゅうございます。」
姫「退屈なさっているようですわね」
魔女「いえ、けしてそのようなことは。こういうところは初めてですので、気後れしてしまいまして。」
姫「初めて?ああそういえば、御身体が弱くてあまりこういう場にお出にならないとエルランジェ伯爵がおっしゃっていましたわ。彼の方の妹君なのでしょう?」
魔女「爵位があったのねドクター。それに何時の間にそういう設定に……。」
姫「せってい?」
魔女「ああいえ、その通りです。」
姫「数々の姫君や令嬢と浮き名を流しているエルランジェさまといえど、妹君なら『おてつき』ではありませんわね。」
魔女「そっ……あたりまえです!」
姫「うふふ。顔を真っ赤になさって。兄君と違って純情ですのね。」
魔女「あ、あの」
王子「あまりわたしの客人をからかわないでくれないか。」
姫「あら殿下。」
魔女「お招きありがとうございます。」
王子「会場で一番目立つお二人が、なぜこのように壁を華やかにしているんだ?」
姫「それは、チキンどもが誘いにいらっしゃらなくて退屈だからですわ。」
王子「毎回冷たくあしらっているのはどこの誰さ?」
姫「それで怯むような方はこちらから願い下げですわ。」
王子「辛辣だね。」
姫「それで?殿下はわざわざただお喋りにいらしたの?」
王子「いいや。こちらの女性をお借りしてもいいかな?」
姫「まあ。ではやはりこの方が殿下のお目当ての方でしたのね。」
王子「美しい姫君。わたしと踊ってくれないか?」
魔女「本当に王子様だったのね……いいえ私は姫様などでは。それにあまり目立つことは」
王子「わたしとは踊れない?」
魔女「そういうことでは……」
王子「よし決まりだ。ワルツは?」
魔女「……少しなら」



王子「魔女殿。きてくれたんだね。」
魔女「なぜ私だと?」
王子「その髪飾り」
魔女「あっ」
王子「思ったとおり、よく似合ってる。」
魔女「あ、ありがとう」
魔女「……ございます」
王子「あの時のように話はしてくれないの?」
魔女「あのときだって貴方を王子様と存じ上げていたらあんな馴れ馴れしく」
王子「気にしないで。ところで君、髪の色……」
魔女「!」
王子「あ、いや、なんでも。とにかく、今は君とわたししかいないのだから、もとの話し方でいい。というか、そっちのほうが好きだ」
魔女「そう?それならそうさせていただくわ。……でも、よかったの?主催者の貴方がホールを抜け出して。」
王子「いいんだ。わたしの有能な従者がうまくやっておいてくれる。」
魔女「綺麗なお庭……。噴水が月の光を浴びて輝いてる。」
王子「気に入った?もし君さえ良ければ、このすべてを君に……」
魔女「?」
王子「……いや。」
魔女「……」
王子「……」
魔女「夢みたいだわ。私、あの塔から出て、こんなドレスをきて、本物のお姫様とお話ししたり、王子様のダンスのお相手をするなんて。」
王子「わたしも夢のようだ。こんなに美しい女性とこの世で出逢えるなんて。」
魔女「…………」
王子「どうかした?」
魔女「あまり褒めないで。この姿は、その、偽物だし。」
王子「偽物っていっても色だけじゃないか」
魔女「……ねえまさか貴方塔で私の……きゃっ!?」
ぎゅっ
王子「可愛いな」
魔女「なぜ抱きしめたりなど?」
王子「月の光に酔ったのかな」
魔女「こんなこと、いけません……!」
王子「好きだ」
魔女「ひ」
王子「その声も華奢な体も全部欲しい。」
魔女「王子様。貴方が抱きしめているそれは魔女です。貴方は今、正常な判断ができていないのです。魔女の悪い術で惑わされているの。だから、は、はなして」
王子「言っていることがめちゃくちゃだ。君がわたしを惑わしているというのなら、離れることは容易いだろう。」
魔女「お願い」
王子「わたしが嫌いか」
魔女「貴方はずるい」
王子「嫌ならこの腕を振り払うがいい。」
魔女「はなして」
王子「なぜ逃れない?」
魔女「だめなの。おねがいだから」
王子「わかった。離すよ。」
魔女「ごめんなさい……」
王子「また、会えるかな」
魔女「私は、もう塔から出られないと、思います。」
王子「じゃあ、わたしが君を訪ねたら、君は迎えてくれるかな。」
魔女「貴方が望んでくれるなら。」



姫「なにを、はなしているのでしょうね。」
剣士「あのように楽しげにする殿下のお顔は初めて拝見しましたな。」
姫「ええ、本当に幸せそうな顔をなさっていますわ。あんなに美しい姫君なら、殿下も心を奪われましょう。」
剣士「姫様は、なぜそのようにおさびしそうな顔を?」
姫「わたくし、そんな顔をしていて?」
剣士「は、いえ!失礼いたしました!」
姫「とても、お似合いだわ。」
剣士「俺は……そのっ……あの人のお隣は、姫様のほうが相応しいと思います。あんなポッと出の娘など」
姫「わたくしが相応しいなら、こんな気持ちにならないのに。」



医師「なんですかにやにやして気色悪い。」
魔女「にやにやなどしていません!」
医師「そんなに舞踏会は楽しかったですか?」
魔女「貴方の薬のおかげよ。感謝するわ。」
医師「時間は夜明けまでたっぷりあるというのに、帰ってしまって良いのですか?」
魔女「もう充分楽しんだわ。夜明けまでだなんて長すぎる。たとえば12時の鐘がなり終わるまででもよかったくらいよ。」
医師「意中の方の閨に忍ぶ余裕をもたせたんですが、無駄になりましたねえ」
魔女「いらない気遣い!?貴方と一緒にしないで。貴方こそ、ニーナをあっさり帰したのね。」
医師「誤解があるようですがイーヴァ。彼女は愛玩対象ですが、恋愛ごっこをするには少々……。」
魔女「昔から思っていたけれど、貴方ってわりと人でなしよね。」
医師「お褒めに預かり光栄です。……おや。塔に着いたようですね。」
魔女「どういう仕組みでこの馬車が、樹々をすり抜けてこんなに速く走るのか、もうつっこまないわよ。おやすみなさい!」
医師「おやすみイヴァンジェリン。良い夢が長く続きますことを。」
魔女「う、うん。おやすみ?」



魔女「ああ、夜が明けてしまう。」
魔女「夢なら覚めなければいいのに」
魔女「赤い髪も赤い瞳も大嫌い。」
魔女「陽光を浴びて、偽物のお姫様は醜い魔女に」
魔女「…………」
魔女「………………?」
魔女「もどらない……?」

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