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三代目の憂鬱 側近、目覚める。

「なにもそこまで」

魔王様は、苦笑した。
私と魔王様直属の四天王との計画をお聞きになったときだ。

王家に、預言の年の琴獅子の月までに子が生まれなければ。
つまり英雄王の血に連なる子供が預言の日までに生まれなければ。

勇者は誕生せず、即ち預言は実現せず。魔王様を倒すなどという不届きな存在は永遠に生じない。

刺客を差し向け、王と后の命を狙ったが、残念ながら、全て失敗に終わった。このままでは預言が実現してしまう。
焦り始めたとき、魔王様にひどい媚びを売っているエルフの小娘が言った。

「その男の子供がその月までに生まれなければいいのなら、その期間に他の男の子供をその女に生ませればいいじゃない」

小娘の発想は、いつもながらに低俗だ。

魔王様の四天王は賛成し、実行に移した。
王家に不和の種を蒔く。
后と、その身を守る騎士との距離を縮め、魅了の術をアレンジして、お互いがお互いを求めるようになるよう仕向けた。
結局のところ、計画はうまく進んだ。
王家のスキャンダルは隠されたらしいが、王と后の仲は急速に冷え切り、后は王の子供ではなく、騎士の子供は身篭った。

しかし、勇者は生まれてしまった。

王は、王都から東の貴族の領地を視察し、数ヶ月滞在した際に、その地でひとりの娘と恋に落ちた。
王が都へ帰る前の、たった一晩だけ、王と娘とは誰にも知られることなく結ばれた。

奇しくも同じ年の同じ月に、后の子供と王の子供、二人の子供が誕生した。

后の子供は王子として、王の子供はただの村の子供として、誰にも真相を知られることなく育つはずだった。

それならそれで良いと魔王様は仰せだった。
英雄王の子供といえど、
あの剣にさえ触れなければ、
あの剣に見つからなければ、
勇者としての能力に目覚めることもなく、ただの子供として過ごし、不死の呪いもかからぬのだと。

そして王子に英雄王の血が流れていないのならば、剣はけして王子を選ばぬ。
ただ為政者として生きて、寿命を全うすればよいと。

剣と預言はそれを許さなかった。

最初の勇者が最初の魔王を倒したのを記念した祭りの日、神殿は例の剣を一般に公開する。
王子は后の手に引かれ、子供は母の手に引かれ、剣の前に立った。
最初の勇者の血に反応し、剣は歌う。

王の時は、聞こえるか聞こえないかの微かな声で。

王子と子供のときには、まるで待ち続けた恋人を目の前にしたように、歓喜の歌を高らかに。

后と少年の母はそこで初めて視線を合わせ―――真実を知る。

私はそれを人に紛れて見ていた。万が一子供が剣に選ばれたときのために、
その場で、勇者の命を狙い、城と神殿とを破壊するつもりだった。

しかし、后と子供の母の青褪めた顔を見ると、動けなかった。
それは、未だに後悔している。

后は嫉妬に狂い、少年の母は病に倒れ、少年はただ戦闘人形として育てられる。
そして数年後、自分の出生の秘密を知った王子の周りで、王と后と老大臣やその他古くから城に遣えていた者が次々と不審な死をとげる。

魔物によって王家の人間が狙われたのだと人間達は言っていたが、
魔王様の命令にはそのようなものは出ていなかった。
おそらく魔王様から離れた者の仕業であろう。

そうして王室の秘密は闇に葬られ、王子は王となり、少年は勇者となった。

そして、ついに勇者は魔王様の前に現れ、魔王様……魔王様の御前に勇者が!

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theme : ファンタジー小説
genre : 小説・文学

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思いついただけで続ける気の無い文章を置いておく場所。
あひるとは同一人物。

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