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三代目の憂鬱 側近、卒倒する。

宮殿へ帰還した魔王を見るなり、その側近は悲鳴を上げた。

最上級の絹で織り上げた漆黒の外套は、そこかしこに擦れたような傷がつき、破れたような箇所もある。黒く焦げたものを引き摺る左手には、火傷のような痕が痛々しい。

体がよろけるのをなんとかこらえて、彼女は声を絞り出した。

「いったいどうなさったのです!」

大きく、重そうな荷物を曳きながら自室に戻ろうとしていた魔王は、ぎくりと体を硬直させて、ぎいい、と首を動かし視線を自分の側近に向けた。

「ああ、余はすこし、地上に降臨してみたのだ。」

耳に心地よいソプラノが応える。それから、悪戯が見つかった子供はぼそりと付け加えた。

「降臨した先で、勇者に遭遇した。」

そしてこの有様だ、と自らの側近の顔を見上げ、大きな目を潤ませた。
左手以外には、目立った外傷もないことにほっとした側近は、主に跪き、治癒の魔法を操作しながら訊ねた。

「忌々しい預言の黒鶫の月はまだ先というのに、御身の前にもう勇者が現れたとは。
何にせよ、魔王様がご無事で良かった。ところで、我が君、魔王様がお持ち帰りになったその何やら動いております黒い物は一体?」
 焼き過ぎた肉の塊にも見えたそれは、よく見ると魔王に引き摺られながら、うねうねと動いている。
「ああ、これはな」
 魔王は視線を泳がせると、言いにくそうに答えた。
「勇者だ。」

今度こそ、側近は卒倒した。


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theme : ファンタジー小説
genre : 小説・文学

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